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史料纂集古記録編 第196回配本 新訂増補 兼宣公記1 (しりょうさんしゅうこきろくへん196 しんていぞうほ かねのぶこうき1)
本体19,000円+税
初版発行:2018年5月10日 A5判・上製・函入・440頁 ISBN 978-4-8406-5196-7 C3321
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室町中期の公卿広橋兼宣(1366-1429)の日記。室町中期の根本史料のひとつ
【内容説明】『史料纂集』は、史学・文学をはじめ、日本文化研究上必須のものでありながら、今日まで未刊に終っていた史料を中核とし、さらに既刊のものでも、現段階において全面的に改訂を要することの明らかなそれを加えて、学界最高の水準で公刊するもの、『大日本古記録』と相並び相補う形で、各時代未刊重要史料の集成の実現をはかるものであります。
本書は、かつて続群書類従完成会より、村田正志氏の校訂で昭和48年に刊行され、長らく品切れとなり入手困難であった。近年、自筆原本の整理が進むとともに旧版には収録されていない部分や、旧版では写本を底本としていた部分の原本の存在することが明らかとなる事例が発見された。
こうした状況をふまえて、学会・研究機関の要望に応え、最新の研究成果を盛り込んで新たに校訂・組版を行い、新訂増補版として刊行することとする。
利用者の便宜を計るため、追加部分を旧版の末尾に補遺を載せることをせず、編年に収録するためにすべてを新たに組版し直した。結果、旧版の本文328頁が426頁と大幅に増えている。今回、国立歴史民俗博物館所蔵の自筆日次記・別記、広橋家、下郷共済会、佐佐木信綱氏所蔵の自筆記を底本とし、自筆記を欠く部分については、国立歴史民俗博物館、宮内庁書陵部、東京大学史料編纂所所蔵の写本などを用いた。
【新訂増補にあたって】
小瀬玄士・榎原雅治(東京大学史料編纂所)
・本冊は新訂増補を行い再刊するものである。具体的には、嘉慶三年二月記、同五月記、応永二十三年八月記、同二十五年四月記を新たに加えたほか、応永二十六年三月記については底本を写本から原本に変更したうえで、欠落箇所を別の写本によって新補した。また応永八年十月記、同十一年十二月記、同二十五年七月記等については、底本を写本から原本に変更した。応永二十九年記については旧版に大幅な錯簡等があったため、これを改めるとともに、脱落部分を原本によって補った。こうしたテキストの新訂増補に加え、翻刻や注記についても全面的な再訂を行った。
・本冊の期間における大きな出来事は、明徳三年の南北朝合一、応永元年の足利義満の南都下向、足利義持の元服・将軍宣下、実仁親王(称光天皇)元服などが挙げられよう。南北朝合一の記事については、欠けている部分はあるものの、後小松天皇が後亀山天皇から三種神器を受ける儀式の様子をうかがい知ることが出来る。また義満の南都下向記事には、義満が東大寺・興福寺を巡見したのち、東大寺宝蔵、すなわち正倉院を開かせたことも記されている。
・家族関係記事では、兼宣の母と思しき人物についての興味深い記述もある。この人物が四国から上洛したという噂を兼宣たちは聞き及んでいたが、父仲光の命により、連絡を取ることを禁じられていたというのである。ところが、仲光から連絡を取ることを許可され、兼宣等兄弟は歓喜したと記される。以降も兼宣はこの人物と連絡を取っていることが知られるが、阿波細川氏との関係も含め興味を惹かれる。
・父仲光亡き後、兼宣は伝奏として活動を始めるが、義満期は記事を欠いている。一方、義持期になると、修法をはじめ社参などの記事でその活動を知ることができる。
・文芸関係の記事では、旧版には収録されていなかった源氏物語関係の記事を取り上げてみたい。これは義持から後小松上皇に対して源氏物語中の「紅葉賀」や「わかむとほり」等の用語について質問があり、それに対しての上皇の答えが使者を務めた兼宣のもとで記録されたものである。当時の上皇や室町殿の古典に対する関心について知る上でも興味深いものであるといえよう。
【目次】〔所収〕至徳4年(1378)正月~応永29年(1422)12月
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