八木書店 出版物・古書目録

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古代王権の成立と展開 (コダイオウケンノセイリツトテンカイ)

仁藤敦史

本体予価10,000円+税

初版発行:2025年5月10日 A5判・上製・カバー装・528頁 ISBN 978-4-8406-2606-4 C3021



古墳~平安初期にわたる王権論が提示する新たな古代史像
5~9世紀の長期間にわたる王権を検証・相対化し、6世紀の欽明期、7世紀後半、桓武期を画期として設定。時代により変化する君主の条件に着目。近現代の天皇制に示唆を与える重要課題を提示。

【内容説明】【新たな王権論・4つのポイント】
①長期間にわたる考証 古墳時代から平安時代の初期(5世紀~9世紀)の、古代王権の成立から転換までを対象に、長期的な変化を概観することで、「万世一系」論のような天皇制の不変性のみを強調する議論を批判・相対化し、新たな王権論を展開する。
②古代王権の画期の設定
 5世紀~9世紀の王権の諸段階について、5世紀の人制・府官制、6世紀の部民制・ミヤケ制・国造制、7世紀後半の公民制・大宰総領制・外交関係の変化、8世紀末の都市王権の成立、皇統観念と氏の再編などを素材に、欽明期・7世紀後半・桓武期を画期と位置付ける。
③時代により変化する君主の条件
 広範囲の王系から成人男性が選ばれた5世紀。血縁継承が確立し性差よりも年齢が優先されて、元キサキが女帝となった6世紀。譲位と太上天皇制や皇太子制が成立し、若年齢化が進んだ8世紀以降。摂関の補佐により幼帝の即位も可能となった9世紀。
 年齢・性差・資質・血統などの要素のうち、どの要素を強調するかによって歴史的に求められる君主像は変化してきた。君主に求められる要件は、社会や国家のあり方により変化するものであり、本書ではその時代による変化に着目する。
④現代につながるテーマ
 本書が課題とする王権の問題は、近現代の天皇制と深い関係にあり、戦前・戦後における古代史理解と密接な関係にある。女帝中継ぎ論や皇太子摂政などの議論はこうした問題を内包しており、古代史だけの問題にとどまらず、近現代史にも重要な示唆を与える。

【目次】序章 古代王権論の成果と課題—女帝・皇太子・太上天皇の成立—
はじめに—古代王権研究と現代—
一、王権の定義と天皇大権
(1)王権の定義 (2)天皇の権力と権威
二、近代の皇統意識
(1)近代の「女帝」観と「軍人」皇太子 (2)近代の女帝論
(3)女帝否定論と肯定論 (4)女帝肯定論の系譜 (5)三后による摂政規定 (6)井上毅の女帝否定論 (7)神功皇后の即位問題
三、中世の皇統意識—『神皇正統記』にみえる皇統意識—
四、近世の女帝と皇太子
五、古代における女帝即位の論理—「女帝中継ぎ」論と「万世一系」論—
六、政治的モガリと女帝の成立
(1)モガリの主宰と女帝即位 (2)元キサキの国政参与と「詔勅」
七、皇太子制の成立
おわりに

第一編 世襲王権の成立—五・六世紀—
第一章 欽明期の王権と出雲
はじめに
一 継体・欽明期の政治基調
(1)継体朝の変革 (2)外交路線の対立と「辛亥の変」 (3)屯倉記事集中の背景 (4)出雲田と飾磨御宅 (5)前期トネリと後期トネリ (6)応神五世孫と無嗣・御名代
(7)国造制の成立 (8)欽明系王統の成立 (9)小 結
二、欽明期の出雲とヤマト王権
(1)東西出雲論の提起と批判 (2)欽明期の出雲地域 (3)二所神戸と玉作・忌部 (4)祭祀系部民と出雲大神への奉仕 (5)出雲臣・出雲国造の成立
三、ヤマト王権からみた欽明期の出雲
(1)大神氏と倭直氏をめぐる三つの伝承 (2)欽明期における三輪氏の台頭 (3)倭直氏と大国魂神 (4)倭屯田と倭直 (5)出雲杵築のオオナムチ神と三輪山の大物主神 (6)画期としての欽明朝
おわりに—プレ出雲臣と出雲国造の成立—

第二章 欽明期の王権段階と出雲—前史との比較を中心として—
はじめに—画期としての欽明期—
一、広義の府官制と人制
(1)広義の府官制秩序 (2)「杖刀人」と「世々」 (3)人制の研究史
(4)手工業生産と人制 (5)玉作の工人編成 (6)須恵器の工人編成 (7)吉備・葛城氏配下の工人 (8)技術系統と人制 (9)允恭期の親新羅外交 (10)広義の人制 (11)祭祀的部民 (12)小 結
二、前期ミヤケの評価とその後の展開
(1)「前期ミヤケ」の評価 (2)「後期ミヤケ」の展開 (3)吉備白猪・児島屯倉の支配 (4)推古期のミヤケ支配
おわりに—諸制度の整備—

第二編 「大化改新」論—七世紀—
第一章 七世紀後半における公民制の形成過程
はじめに—官家の多様性—
一、公民制の成立過程
(1)五十戸制の変遷 (2)品部廃止詔
二、食封と造籍—氏族制原理の残存—
(1)甲子の宣と部曲・食封 (2)甲子の宣と庚午年籍 (3)庚午年籍における京戸の問題 (4)庚午年籍と王子宮・寺家 (5)天武期の封戸政策
おわりに

第二章 広域行政区画としての大宰総領制
はじめに
一、大宰総領の研究史
二、孝徳期の東国国司と東国惣領
三、斉明期の国司国造と天智期の筑紫大宰
四、天武・持統期の大宰総領制
五、文武期の大宰総領と国司
六、大宰総領制と山城・信濃遷都
おわりに

第三章 外交拠点としての難波と筑紫
はじめに
一、孝徳期の外交基調
二、孝徳期の外交的対立
(1)外交路線の対立と変化 (2)古人大兄「謀反」事件の処理 (3)東国国司の再審査 (4)孝徳期の外交
三、孝徳期の難波遷都
(1)難波遷都の実態 (2)小郡宮の構造 (3)小郡と大郡 (4)長柄豊碕宮の造営 (5)儀礼空間としての宮の整備 (6)外交施設としての難波宮 (7)筑紫の小郡・大郡 (8)新羅使の入京
おわりに

第三編 王権と儀礼—七・八世紀—
第一章 律令国家の王権と儀礼
一、天皇と貴族
(1)天皇専制か貴族制か (2)合議制の内実 (3)実例の検討 (4)天皇の二つの役割
二、畿内制の成立
(1)畿内制の成立時期 (2)「みやこ」と「ふるさと」「ひな」
三、宮の経営からみた王権構造
(1)宮号の限定化 (2)舎人と帳内・資人 (3)後宮の整備と天皇
四、王権儀礼(朝儀)の成立
(1)儀式の構造 (2)元日朝賀の位置付け

第二章 殯宮儀礼の主宰と大后—女帝の成立過程を考える—
はじめに
一、和田説の検討と大后の役割
二、倭国の喪葬儀礼
三、天皇のモガリ
四、元キサキによる詔の実例
五、モガリの衰退と元キサキの変質
六、大后の国政参与と女帝の即位
(1)次期大王の指名 (2)大王代行(臨朝称制) (3)女帝としての即位
おわりに

第四編 王権の転換—八・九世紀—
第一章 古代都市の成立と貧困
はじめに
一、古代都市論の現状
(1)通説の形成 (2)通説に対する理論的な批判 (3)通説に対する都市性の強調
二、広義の分業論と古代都市の成立
(1)家産制経済と市場経済 (2)社会的分業論と都市の成立
三、古代都市の諸段階と貧困
(1)都城制前期—政治都市段階— (2)都城制後期—都市王権段階—
おわりに

第二章 「山背遷都」の背景—長岡京から平安京へ—
はじめに
一、研究史の検討
二、「水陸之便」
三、米の都市的消費と水上交通
四、近江遷都と「山背遷都」
おわりに

第三章 桓武の皇統意識と氏の再編
はじめに
一、「皇緒」の選択肢
(1)道鏡即位の可能性 (2)光仁即位の可能性
二、桓武の双方的位置
(1)桓武の母系 (2)桓武の父系 (3)桓武の皇統意識と万世一系
三、平安初期における「氏の再編」
(1)天武朝の「八色の姓」 (2)「氏の仕奉」と「官人の仕奉」 (3)奈良時代の氏と家 (4)平安初期の再編
おわりに

終章 古代王権の成立と展開
あとがき
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