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西山宗因の研究 (にしやまそういんのけんきゅう)

尾崎千佳

本体12,000円+税

初版発行:2024年3月28日 A5判・上製・カバー装・704頁 ISBN 978-4-8406-9773-6 C3092



連歌と俳諧に生きた激動の詩人の虚実に迫る!

全集刊行の成果に最新知見を加えた論考と詳細な年譜考証を収録

★『西山宗因全集』の編集委員として資料を博捜精査した著者が、その成果を集大成!
★2段組390頁におよぶ年譜考証には、従来の研究史を刷新する新知見を豊富に盛り込み、幅広い社会的・地域的階層との交流の様相を精緻に描き出す
★近世前期の武家社会における牢人の実証研究として日本史・文化史にも寄与

【内容説明】【第一部】晩年の宗因像の出所を没後百年におこなわれた宗因顕彰運動に求め、談林俳諧の祖としての俳諧師宗因、および、その反措定としての連歌師宗因という虚像をいったん解体したうえで、寛文期以降のその俳諧活動の実態に迫る。
【第二部】肥後加藤家牢人から職業連歌師に転じた宗因の実像を近世初期武家社会のなかに位置づけ、諸大名との関わりのなかから生まれたその紀行が、いかなる真実を伝えるべく虚構を成しているか、創作の主題と方法を明らかにする。
【第三部】西山宗因全集第五巻所収「西山宗因年譜」を基盤として、慶長十年(1605)から天和二年(1682)にいたる宗因の全事績を、近世初期の文化・政治・社会の状況と関わらせつつ、具体的に考証する。

文学史を生きたものにするために(尾崎千佳)
 本書の課題は、西山宗因の存在を動態的に文学史上に位置づけることにある。
 西山宗因は、かつて、談林俳諧の総帥として知られていたが、実証的研究の進展につれて、その本業はあくまで連歌にあり、俳諧は余技と見なされるようになった。談林俳諧の中心人物としての「俳諧師宗因」を「連歌師宗因」として理解することは、「革新の詩人」を「保守の詩人」と見ることであり、文学史はここに大きく転換されたかのようである。
 しかし、「俳諧師宗因」も「連歌師宗因」も、その存在を固定的に捉える点では等しい。芭蕉や宗祇のようなあらかじめ定められた頂点との比較において価値づける文学史を脱し、これを生きたものにするためには、宗因の人生の各段階における行動と作品が、いかなる文化的・社会的状況のもとにとられ、生み出されたのか、その変化の意味を徹底して問わなければならない。 以上の問題意識に基づき、本書には、宗因をめぐる論考十編と年譜考証を収めた。西山宗因の虚像を解体して実像に接近したうえで、その創作の主題と方法に迫りたい。

【目次】はじめに

第一部 俳諧師宗因の虚と実
第一章 晩年の宗因—宗因伝記研究をめぐる覚書—
「宗因連歌回帰説」の起源/素外編『梅翁宗因発句集』をめぐる諸問題/素外随筆『玉池雑藻』所収の宗因書簡/晩年の宗因に見る二面性
第二章 宗因顕彰とその時代
宗因俳諧発句集編纂の時代/大坂檀林の宗因称揚—『むかし口』前後—/江戸談林の宗因顕彰—『梅翁宗因発句集』前後—/宗因顕彰の方法/近代的伝記研究の必要性
第三章 宗因における出家とその意味
宗因出家をめぐる諸問題/法雲「西翁隠士為僧序」の虚実/号をめぐる諸問題/西国体験の情報伝播/連歌師宗因の俳諧
第四章 宗因と伊勢続貂
「宗因と伊勢」再考/外宮御師との初期交流/宇治大火と『伊勢正直集』/伊勢下向時における交流の諸相/旗印としての「守武流」/伊勢俳壇との接触と距離
第五章 連歌師宗因の俳諧点業
宗因褒詞の虚実/「俳諧師宗因」像の語られ方/宗因の点業/連歌師の俳業、その功罪

第二部 連歌師宗因の実と虚
第一章 『肥後道記』の典拠と主題
宗因自筆本の発見とその顛末/諸本と本文の二系統/趣向としての『土佐日記』/主題としての『源氏物語』/紀行の作者と読者
第二章 陸奥行脚とその紀行
奥州紀行自筆諸本をめぐる諸問題/諸本と本文の二系統/いまの「翁」の東下り/東下りの変奏
第三章 大坂城代青山宗俊との交渉
宗因の大坂移住とその意義/大坂城代と宗因/寛文—延宝の大坂城代下屋敷/大坂文化の復興と西山宗因
第四章 『明石山庄記』と『明石千句』
『明石山庄記』の自筆本二種/『明石山庄記』の表現と主題/成立年記の齟齬の意味/『明石浦人丸社千句』の成立
第五章 主従の連歌から職業としての連歌へ—近世武家社会における連歌の情理—
宗因の転身をめぐる諸問題/肥後加藤家の政事と文事/下津棒庵と京の町衆/宗因の連歌修行と新在家の文化/加藤家における宗因連歌の位置/茶事と連歌の牢人生活/述志と取次の連歌/述懐の連歌と主従の情誼/職業連歌師の義理と自由/連歌師宗因の行動と表現

第三部 西山宗因年譜考証

おわりに


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