八木書店 出版物・古書目録

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出版物

在庫あり

ひですの経 (ひですのきょう)

ハーバード大学ホートン図書館所蔵

釈文・解説:折井善果・白井純・豊島正之

キーワード:
長崎 / キリシタン / 印刷史 / キリスト教 / 活字 / 活字印刷 / イエズス会

本体23,000円+税

初版発行:2011年11月30日 B5判・392頁 ISBN 978-4-8406-2084-0 C3016


『読売新聞』(2012年5月16日)に大きく紹介!「創造主デウスの存在説く」「遣欧使節の1人が校閲」
400年前に刊行された流転のキリシタン版
高精細カラー版で影印!
現存唯一の孤本、その全貌を初公開!
日本語・日本文学、宗教・思想史、書誌学、文化史等々、様々な研究分野に進展をもたらす新出資料!

【内容説明】■■■講演会開催(終了しました)!■■■

『ひですの経』影印・翻刻刊行記念講演会開催!
「16-17 世紀の日本におけるキリシタンと出版―新出!天下の孤本からわかること―」

【日時】2012年1月22日(日)開場13 時30 分、開演14 時
【講師】豊島正之(東京外国語大学教授)・折井善果(慶應義塾大学専任講師)・白井 純(信州大学准教授)


初期は西欧渡来の活字、後期には日本初鋳造の金属活字を使用したキリシタン版。
本書では更に木活字で補填された実態が判明。日本印刷史を書き換える新資料!
高精細カラー版の影印、克明な活字注釈を付した釈文、新知見を示す詳細な解説により、長崎でのイエズス会出版の実像が眼前にありありと立ち現れる!

●底本は、1611 年長崎刊の天下の孤本キリシタン版。
●1921年以来90年、杳として行方の知れなかったキリシタン版が、いま高精細カラー版でよみがえる。
●所蔵館の全面協力の下、裏打に隠された断簡も展延し、紙背の印圧痕までも撮影し尽くした、完璧な複製。
●今日のキリシタン版研究の最先端を示す詳細な解説。
●釈文には、一字一字の活字が他の後期キリシタン版で使用されているか否かを注記したほか、原本にはないキリシタン特有のよみ(「御掟」等)をルビに示して、読書用本文としても読み易きを目指した。


『ひですの経』は、1611 年(慶長16)に長崎で刊行されたキリシタン版である。
その内容は、ドミニコ会のスペイン人説教師ルイス・デ・グラナダ著『使徒信条入門』(1583 年)の、第一巻相当部分の抄訳であることが、このたび初めて明らかになった。未信者や入門者にデウス(創造主)の存在を説くものである。
本書は1907 年にベルリンの古書店目録に掲載された表題紙のみが紹介されて以来 、内容不明のまま、研究者の捜索の甲斐なく行方不明になっていたが、2009 年7 月、米国ハーバード大学ホートン図書館においてその存在が確認された。


デウスの存在を日本人に証明
 慶應義塾大学専任講師 折井善果

 一九〇七年、独ベルリンの古書店の目録に掲載された『ひですの経』の存在は、一九二六年、岡本良知氏によって日本に報じられた。その後ラウレス神父により、米シカゴの某実業家に渡った可能性が示されて後、長らくその追跡は途絶えていた。そして近年、豊島正之氏によって再開されていた同書の追跡は、二〇〇九年、米ハーバード大学でその結末を迎えることになった。
 キリシタン版は、その複雑な歴史ゆえに、漢籍に紛れて発見されることがあり、また日本語・日本文字にも関わらず、活版印刷ゆえに洋書に分類されることがある。また稀書ゆえに個人蔵となって一般の目に触れられなくなることもある。二十世紀初頭のジャポニズムの流れに乗って米東海岸に辿りついた『ひですの経』がこうして無事再発見された背景には、ハーバード大学同窓生の旧所蔵者スティルマンの存在という、もうひとつのドラマがある。
 序章に「目に遮る物を以て肉眼にかかり給わぬデウスと其御善徳を見知り奉るべし」と聖書の一句を掲げる同書は、自然界の秩序と美の観察から、超自然なる万物の創造者デウスの存在を、当時のスコラ学の概念さえ用いて日本人に証明しようと試みる。ザビエル以来のイエズス会の日本語研究、徹底的な論理と雄弁術を駆使したデウスの存在証明が、徳川封建思想勃興期の日本の知識人に与えた動揺の程を暗示する内容である。
 ヨーロッパに古くから存在することの多いキリシタン版が、アメリカに存在する例は極めて少ない。『ひですの経』が東西異文化交流の懸け橋として、また新たに日米交流の懸け橋として担う役割に、一冊の本の重みを感じずにはいられない。


四百年前の金属活字印刷を解明
 東京外国語大学教授 豊島正之
 キリシタンものと言えば、先ずは天草版イソポ物語のような口語体であろう。確かに、口語体本には芥川「奉教人の死」のようなオマージュまで生むインパクトがあり、学的興味も、専らこうした口語版本か或いはせいぜいローマ字版本が対象で、漢字仮名交じり「国字本」版本は、キリシタンものとはいえ所詮は国字本、さしたる関心を呼ばず、論文も数える程であった。
 状況が一転したのは印刷史の観点が導入された十年程前からで、日本古活字版の祖を、版式から(通説の朝鮮活字版ではなく)キリシタン版に辿る説は、もはや事新しく説くまでもなく、初期キリシタン版の漢字活字が本邦製作ではなく、天正遣欧少年使節が滞在中に発注して持ち帰った西欧製金属活字である事も判明している。
 後期キリシタン版の白眉『ぎやどぺかどる』(一五九九)に比して、その後十年余を経て成った本書『ひですの経』は、払底した金属活字を木活字で補い、漢字を変体仮名と誤認、用字法は一貫せず、他キリシタン版には絶無の抄物書までも併せ用いる等、言語・組版規範が随所で破綻している。『ぎやどぺかどる』には見えないこの破綻は、却ってその背後の追求した規範の存在と印刷技法とを鮮明に照らし出す。本書裏表紙芯に反故として隠された本書の断簡は、本書の改版過程を示唆し、キリシタン版制作の現場を眼前に描き出す、希有の資料である。
 時あたかも本書開板(一六一一)の四百年紀に当たり、キリシタン版の言語規範・印刷技法解明への絶好の資料が、所蔵館の御理解の下、精細な画像により再び世に頒かれる事に、感謝したい。


キリシタン版について

安土桃山時代から江戸時代初期(十六世紀末~十七世紀初)にかけて、イエズス会によって導入された西欧の活版印刷術で印刷された書物をキリシタン版と称する。
 ローマ字本・国字本があり、内容はキリスト教の布教伝道のための書物を中心に、『平家物語』『和漢朗詠集』など国文学、『伊曽保物語』のような翻訳文学、『落葉集』『日葡辞典』のような辞書類等、布教者・信者の教育を企図したものであった。
 天正十八年(一五九〇)、イエズス会宣教師アレッサンドロ・ヴァリニャーノによる印刷機搬入に始まり、約二十年後、慶長十九年(一六一四)の禁教令で、日本での刊行事業は終焉をむかえた。その刊行書はいずれも伝存きわめて稀で、天下の孤本も少なくない。
 『ひですの経(一六一一)』は、重要文化財に指定されている『ぎやどぺかどる(一五九九)』(天理図書館善本叢書38所収)・『落葉集(一五九八)』(同叢書76所収)と同一の金属活字で印刷された、後期キリシタン版の一つであり、このたび所蔵館の御快諾を得て、初めて全面複製されるものである。

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