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古代・中世の情報伝達―文字と音声・記憶の機能論―
在庫あり

古代・中世の情報伝達―文字と音声・記憶の機能論― (こだい・ちゅうせいのじょうほうでんたつ もじとおんせい・きおくのきのうろん)

渡辺滋著

本体10,000円+税

初版発行:2010年10月10日 A5判・上製・貼函入・450頁 ISBN 978-4-8406-2073-4 C3021


古代・中世社会を動かしたのは音声だった!
「文書による国家支配が徹底していた」という古代史の常識を覆し、
音声で伝達された情報を文献から復元する新しい方法論を提示
さらに古代中国や西欧との比較から、日本の古代・中世社会の特質を論じる!

【内容説明】【すいせんの言葉】
「文字に残る音声と記憶の発見」

国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学教授 井原今朝男


 旧来の文献史学では、無文字社会における民衆生活史の解明に冷淡だった。今、その研究姿勢への批判が起きている。それは文字史料偏重への批判でもあるが、とりわけ前近代民衆の知の体系をあきらかにするために、歴史学が無文字社会をどのように解明するのか、新しい方法論の開拓が求められている。
 こうした中で渡辺滋氏は、日本古代史料のみならず、中世史料を丹念に精力的に博捜・精査し、文書行政が、①文字情報として処理される部分と、②記憶と音声によって情報の核心が伝達される部分の二元的構造になっていたことを発見した。
 文書と音声を併用した行政処理方式は、九世紀に黙読の方式が加えられ、中世の陣定や政務処理においても音読と黙読方式が併用され、日本独自の文書主義が創出されたとする。また、古文書や帳簿は「一部の情報しか文字化されない」ものであり、それゆえ、在地刀禰や古老による「問注」や「口上」・「見聞」や関係者の「読合」「披露」による集合的記憶が重視され、社会秩序が維持されたとする。
 それだけではない。渡辺氏は、文字と音声による情報伝達論を中国古代やシュメール人・西欧社会など世界史との比較研究の中で位置づけようとしている。書状とともに、使者の生きた記憶による「口上」とが併用されて情報伝達が完結する構造は、世界史の中ではより一般的潮流であり、古代中国のように文字情報のみが完全に独立して情報を伝達するシステムはむしろ特殊事例であったとする。
 この労作によって、歴史学も文字社会と無文字社会の世界を架橋する方法論を確固とすることができるようになった。本書は、日本古代・中世の情報伝達の全体像を文字と記憶・音声の相関関係という世界史的な視野からとらえることに成功している。
 本書は、古代史・中世史・近世史・情報論・無文字社会論はもとより、文献学・目録学・言語史・音韻史などに関心をもつ人びとから厳しくも暖かな批判や学問的論議を巻き起こすものと信じる。とりわけ、中世史一般に関心をもつ人びとにひもといてほしい労作であり、江湖に受容されることを切に願うものである。


●文字(文書)が単独では意味を持たず、文書を持参した使者の口頭伝達をともなってはじめて機能したことを論証。
●譲状、偽文書、帳簿などの史料から「音声」を復原するという新しい方法論を提示。
●中国の律令制度を継受した古代日本では、文字よりも音声が重要だったと指摘。
●「文書による国家支配が徹底していた」という、これまでの古代史の「常識」を覆す!
●中国では音声より文字が重視されたが、世界的にみればむしろ例外だったことを指摘。
●日本古代史を中心に、中世史・中国史・西欧史・日本語学なども視野に。


【本書の内容より】
音声があふれる日本の古代・中世社会

■行政処理
・文書を大声で音読(大勢の人に一度に情報を伝えるため)
・文書を回覧、黙読(少人数向き)。それぞれの長所・短所を活かした伝達方法を選択
■土地の売買
・当事者の「口約束」だけ
・文書の読み上げ、当事者同士がサイン
■使者の役割
・「詳しくは使者に聞いてください」大切なことは文書には書かれない
■識字能力の低さ
・地方の下級役人レベルは文字が書けず、音声でしか理解していなかった

【目次】第一章 「文書主義」の導入と情報処理
 第一節 古代中国における文字利用
 第二節 古代日本への文書主義の導入
 第三節 行政処理への黙読の採用
 第四節 黙読と音読の併用
 〔コラム1〕「連続記法」から「分かち書き」へ

第二章 社会における文字の役割
 第一節 書式と機能
 第二節 帳簿に「文字化される情報」と「されない情報」
 第三節 帳簿と音声・記憶
 第四節 「読み合わせ」するということ
 第五節 文書の社会的な役割
 第六節 文書の作成と披露
 第七節 紛失状の作成
 第八節 文書と記憶
 第九節 古代社会における文書
 〔コラム2〕手継文書の形成

第三章 情報伝達における「文字」と「記憶」
 第一節 使者の原初形態
 第二節 手紙(私文書)の場合
 第三節 文書(公文書)の場合
 第四節 文字化された情報の特質
 第五節 遠距離への情報伝達
 第六節 遠距離への情報伝達と記憶
 第七節 記憶から文字へ
 〔コラム3〕近世における手紙と使者

第四章 日本古代・中世における文字利用
 第一節 日本社会への文字の導入
 第二節 文字利用の一形態としての代筆
 第三節 生きた人間を介した情報伝達
 第四節 平安期における文字利用の本格化
 第五節 偽文書の作成
 第六節 文字と記憶
 第七節 裁判に見る文字と記憶
 〔コラム4〕現物を見て分かること
終 章 前近代社会における文字利用
    ―東アジア以外の社会との比較から―
 第一節 文字登場の前史
 第二節 文字の創成
 第三節 文字の限定的な利用
 第四節 古代ギリシャ・ローマにおける文字利用
 第五節 文書主義の変質
 第六節 中世西欧における記憶と文字
 第七節 中世的文書主義とその終焉
 第八節 遠距離への情報伝達方法
 第九節 使者と口上
 第十節 使者の記憶
 〔コラム5〕記憶と楽譜
 参考文献
 索  引(事項・史料名〔文書〕・史料名〔典籍〕)

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