出版物

尊経閣善本影印集成 第三輯 古辞書(全8冊) (そんけいかくぜんぽんえいいんしゅうせい)
第18冊 色葉字類抄一 本体30,000円(1999.1)
第19冊 色葉字類抄二 本体30,000円(2000.1)
第20冊 節用集 本体20,000円(1999.5)
第21冊 字鏡集一 本体30,000円(1999.10)
第22冊 字鏡集二 本体30,000円(2000.9)
第23冊 字鏡集三 本体30,000円(2001.1)
第24冊 字鏡集四 本体30,000円(2001.5)
第25冊 温故知新書・童蒙頌韻 本体28,000円(2000.7)
本体228,000円+税
初版発行:1999年1月30日 B5判・A4判横本・B5判平均430頁・A4判横本平均360頁、総2,978頁 ISBN 4-8406-2293-0 C3321
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最高峰の古典文庫から至宝の蔵書を精選!
平安時代史・中古文学研究の根本資料を初めて影印!
【内容説明】色葉字類抄 二巻本・三巻本(本集成第18巻・第19巻所収)
橘忠兼(たちばなのただかね。生没年未詳)編。古代末期成立の辞書。平安時代末当時の実用語から、広範な和語・漢語を採録。これらの語を第一音節のイロハ四十七篇に分け、更に各語を天象・地儀・植物・動物・人倫・人体はじめ二十一部に意義別分類し配列したものである。この書には、当時の漢詩文作成において必要な語を中心に、漢字・漢語が豊富に採録され、平安時代末における国語の漢字表記の実際を知る上で重要である。例えば、藤原佐理筆「去夏帖」や正倉院文書等に記述のある榑(くれ)材の単位である「村(読みはスンもしくはスム)」は、二巻本・三巻本の記述によって、当時の単位として機能している事も確認されている。この他にも豊富な振り仮名により寺社、国郡、姓名等、固有名詞の読法の手掛かり等を得られ、国語学的のみならず、広く当時の文化史的状況を知る上でも好個の資料である。本書は、天養年間(1144~1145)から治承年間(1177~1181)までに成立したと推定される。諸本には原初の体裁ともいう二巻本、最も整備された形の三巻本、そして十巻本(通例「伊呂波字類抄」と称する)がある。尊経閣文庫は二種所蔵。
二巻本(永禄八年〈1565〉写・上下二巻四冊)は、世俗字類抄を承けて、実用文作成のための辞書から漢詩文作成のそれへと編集方針の転換が図られた本で、節用文字・世俗字類抄・伊呂波字類抄を含めて、字類抄諸本の関係を見極める上で、きわめて重要な本である。と共に、現存三巻本の欠落個所の本文の古態を知ることのできる点でも貴重である。
三巻本(鎌倉初期写・中巻と下巻一部を欠。重要文化財)は、二巻本を基に更に漢字・漢語の増補整理の徹底が図られた本である。特に畳字部の漢語の類聚は精細を極め、平安時代人の漢語認識を知る上で、必須の資料を提供するものであり、又、この書を広く古代日本の言語文化を理解する上での基本の書たらしめている。尊経閣文庫本は、現存諸本中最古の写本で、今回精緻に影印を行った。
節用集 黒本本(本集成第20巻所収)
著者不明。中世成立の国語辞書。室町時代、文明年間(1469~87)頃までに成立。近世以降の改編された節用集に対して「古本節用集」といい、「せっちょうしゅう」とも訓む。当時日常普通に使用されていた語を集め、イロハ分けにし意義分類するという体裁は、院政期成立の「色葉字類抄」とほぼ同じだが、所収項目の総体や部門名、収録する語彙が大きく異なる。節用集は、鎌倉時代以降の和書の引用も多いので、通用の辞書として内容的にも便宜が良かったようで、もともとは一巻一冊であったと推定されているが、その後の改編増補によってかなり多くの系統本を生み出している。それらは三系統(伊勢本系・印度本系・乾本系)に分類されるが、今回影印するのは印度本系の古写本で、室町中期、応仁・文明(1467~1486)頃から享禄・天文(1528~1554)頃の書写であろうと推定されており、最も書写の古いものの一つ。金沢の黒本植氏旧蔵であったことから「黒本本(くろもとぼん)」と称されている。諸本で共通する付録は京中小路名(京師九陌名とも)。尊経閣文庫蔵本では他に十二月の異名、十干・十二支のおなじみのものから、点画少異字として一から二画の違いで異なる漢字の一覧等を付録としている。
字鏡集 二十巻本(本集成第21巻~第24巻所収)
菅原為長(すがわらのためなが〈高辻為長>1158~1246)編というが、承澄の著した『反音鈔』所載の「四聲韻綱目」に従った漢字配列ということで、その関係者とも推定されている。漢和辞書。諸本には七巻本系・二十巻本系がある。本書の祖本は、標字を韻の順に配列した「字鏡抄」といわれ、この書が後に類似した字形で配列する形式に改編された「字鏡抄」(永正本・尊経閣文庫蔵)を生み、他方で初原本と永正本を取り合せ、和訓等に古態を留める「字鏡鈔」(天文本・尊経閣文庫蔵)ができたという。
この後更に増補・改編され七巻本・二十巻本「字鏡集」を生み出した。今回影印する二十巻本(応永23・24写。最古本)は後者「字鏡鈔」からの流れを汲む。全体を一九二の部首に分け、更に各項を従前の辞書にならって意義別の一四の部門に分類配列する。異体字や難字、全体にわたって何種類にも付されたのべ約六万にもなる豊富な和訓等にそれまでにあった辞書の集大成の観がある。尊経閣文庫本には、掲出の字に朱点が付されたものも少なからずあり、同時代の辞書を援用しつつ使うことで、この膨大な辞書を見渡すことが可能となる。
温故知新書(本集成第25巻所収)
室町時代の辞書の一。二巻三冊。著者は、三井寺(現滋賀県)の新羅明神社の社司大伴広公。名前の公は敬称として、泰広にあてる説もある。文明十六年(1484)成立。五十音順配列の国語辞書としては最古のもので、尊経閣文庫所蔵本はその唯一の伝本であり、成立後さほど遠くない時期の写本と推定される。あ・い・う…と続く五十音の部類を梵字で表記し、各部をそれぞれ乾坤・時候・氣形・支體・能芸・生殖・食服・器財・光彩・数量・虚押・複用の十二門に分け、掲出した語句の最初の音によって各部を配列する。門名は『聚分韻略』と一致する。収録語数は約一万三千。や行・わ行にもイ部・ウ部・エ部を設けるなど全て五十音になっているのが特徴。出典は万葉集などの国書はじめ、文選・論語といった漢籍などその数は多い。神社の社司である著者が梵字を利用する特異性は、この書の序文を書き、著者の友人でもあった三井寺の学僧尊通らとの関係からか。引用された漢字やその配列等の内容的な面では同時代の辞書『塵芥』(成立年未詳)と相互に関係があり、成立年代がはっきりする辞書として同時代の国語や音を知る上で、また周辺の辞書との関連を考える上でも、その利用価値は高い。
童蒙頌韻(本集成第25巻所収)
三善為康(?~1139)撰。天仁二年(1109)成立。鳥羽天皇の時、藤原忠通の要請で、初学者の漢詩文作成にあたって韻字を覚える為に、平声の韻字を上平・下平とも各十六の韻に分類して、四字句づつそらんじることができるようにまとめたもの。尊経閣文庫本は弘治二年(1556)の書写で、四言一句の形式からか『韻蒙求』という別名が包み紙に書されている。この書の韻の次第は、同じ作者がまとめた『掌中歴』(本書第二輯所収)を元にした『二中歴』(同じく第二輯所収)の切韻歴、四聲戸主の切韻戸主字と一致する(但し二中歴該当部には、掌中歴には切韻歴が無いとの注記)。また、掌中歴が範としたという『口遊』(源為憲著)にも同じ配列が見られるという。この書は本来音引きの辞書である中国の『切韻』や『広韻』の影響を受けており、平安時代の漢詩文の押韻を考慮する上でも重要な資料。写本のそれぞれの字に付された訓は、同一の漢字を音読した後に訓読する「文選読み」になっていて、韻字を覚えるために効果的と思われるこの方法が、組織的に採用された事を知る古い資料でもある。
【目次】【所収書目】
「色葉字類抄」 鎌倉初期写 三巻本(重文) 永禄八年写 二巻本
「節用集」 黒本本 印度本系 一冊
「字鏡集」 応永二十三・二十巻本
「温故知新書」 室町末写 二巻
「童蒙頌韻」 弘治二年写 一巻
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