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律令国家の辺境と交通—揺れ動く南北の境界と領域— (りつりょうこっかのへんきょうとこうつう ゆれうごくなんぼくのきょうかいとりょういき)
本体予価8,500円+税
初版発行:2025年5月15日 A5判・上製・カバー装・520頁 ISBN 978-4-8406-2276-9 C3021
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時代と共に揺れ動いた律令国家と蝦夷・隼人・朝鮮半島等との境界で、何が起こっていたのか
東北地方の蝦夷、九州地方の隼人等、律令国家の支配が及ばない周縁との接点=辺境に注目し、交通が果たした機能に迫る
【内容説明】①辺境と交通をテーマに文献史学・考古学による書き下ろし論考25本
奈良・平安時代、東北地方の蝦夷の人々や九州地方の隼人など、律令国家の周縁地域には支配領域との接点=辺境が存在した。その辺境に注目し、交流や交易の意味も含む「交通」を切り口に、文献史学・考古学の両側面から、最新の研究成果をふまえた書き下ろし論考25本を収録。
②東北地方の蝦夷と辺境
律令国家の支配領域が越後・陸奥・出羽地方に展開する奈良・平安時代において、軍事と交通路の整備、国家権力との関係、軍事境界線の目視できる目印となった城柵、国郡行政による律令国家支配の実像、人口調査が辺境の人々に与えた影響など、辺境の地域で繰り広げられた諸相を論じる。
③九州地方の隼人と辺境
奈良時代の初頭に律令国家の支配領域に取り込まれた、九州地方の隼人。同地方には、朝鮮半島と隣接した壱岐・南島など、律令国家の支配が及ばない島々も存在した。こうした諸地域が律令国家とどのように接触し、交流したのか。国府を基点とした交通路の整備、仏教の多様な展開・受容など、その多面的な諸相を明らかにする。
④土器などの交易からみた多様な辺境の特質
陸奥から北海道に運ばれた土器や、東北と関東の土器の移動に注目した交易、琉球を含む南島との交易など、多角的な視点で、辺境の特質を明らかにする。
【目次】〔全25編書き下ろし〕
はじめに ◉川尻秋生
Ⅰ 総 論
1 辺境と国郡行政 ◉鐘江宏之
はじめに
一 七世紀における辺境—拠点の掌握の時代—
二 八世紀における支配の浸透・拡大
三 辺境における国郡運営の特質
おわりに
2 辺境と宗教 ◉藤本 誠
はじめに
一 七世紀前半の辺境と宗教
二 七世紀末~八世紀前半の辺境と宗教
三 八世紀後半~九世紀前半の辺境と宗教
おわりに
3 古代東北の交通と地域編成—「山道蝦夷」と横手盆地に注目して— ◉永田英明
はじめに
一 「山道蝦夷」と南北交通路
二 奥羽山脈を越える東西交通と地域関係—横手盆地の支配をめぐって—
おわりに
4 考古学からみた辺境における地域支配の形成と交通路—陸奥国南部を中心として— ◉藤木 海
はじめに
一 陸奥国南部における律令支配の形成と交通路
二 幹線交通路に沿った同系瓦の展開
三 瓦作りの波及からみた郡間交通路
四 辺境地域におけるの瓦作りの展開と交通路
おわりに
5 古代の辺境・辺要としての出羽国 ◉十川陽一
はじめに—辺境と辺要—
一 出羽国の地理的条件—東山道・北陸道の併存—
二 出羽国における支配領域の展開
三 辺要としての出羽国と城柵
四 秋田城介の補任からみた出羽国の変質
おわりに
6 辺要国・縁海国 ◉橋本 剛
はじめに
一 辺要国
二 縁海国
三 辺要国・縁海国と七道制
おわりに
7 西海道と辺境・交通 ◉酒井芳司
はじめに
一 律令制国家の辺要としての西海道
二 対外交流と軍事の拠点としての九州北部
三 西海道の交通体系の成立と特質
むすび
〔コラム〕続縄文文化と須恵器 ◉藤野一之
Ⅱ 辺境の交通と領域
1 陸奥国中部における支配領域の拡大と交通・社会—飛鳥・奈良時代を中心に— ◉村田晃一
一 地域区分
二 地域ごとの様相
三 B〜D区における支配領域の拡大と城柵
四 交通
五 まとめ
2 出羽山道駅路と「秋田之道」を復元する ◉高橋 学
はじめに
一 造山十足馬場遺跡の発掘調査
二 調査成果から読み取れること
三 出羽山道駅路を復元する
四 「秋田之道」を復元する
五 二系統の駅路と由理・雄勝を結ぶ連絡路
おわりに
3 越後・出羽における支配の拡大と交通 ◉相澤 央
はじめに
一 越後・出羽の領域変遷と交通
二 東北北部と越後との交流
三 出羽建国後における越後国
おわりに
4 出羽国南部の東山道駅路—直路と延喜式ルート— ◉中村太一
はじめに
一 奥羽地域における駅路とその変遷
二 出羽国南部における東山道駅路の復元
三 延喜式ルートの性格と成立
おわりに
5 辺境・壱岐の豪族と交通 ◉堀江 潔
はじめに
一 弥生時代の壱岐—A~D群の成立期—
二 五~六世紀代の壱岐—壱岐の豪族と畿内豪族、北部九州の豪族—
三 七世紀~八世紀初頭の壱岐—壱岐の豪族と大和政権、律令国家—
むすび
6 南九州の交通と辺境論 ◉菊池達也
はじめに
一 南九州の駅路
二 領域の変遷と交通路の変化
まとめにかえて
〔コラム〕辺境の外側の蝦夷社会—八戸地域— ◉宇部則保
〔コラム〕南島の交易と辺境 ◉田中史生
Ⅲ 辺境をめぐる交流・交易
1 東北北部から北海道に運ばれた土器—須恵器観の視点から— ◉渡辺 一
はじめに
一 須恵器観からみた長頸瓶
二 東北北部と長頸瓶
三 北海道と須恵器
おわりに—境界領域と須恵器—
2 東北地方の仏教と寺院政策 ◉斎野裕彦
はじめに
一 飛鳥・奈良時代の仏教と寺院政策
二 奈良時代から平安時代へ—儀礼の変化—
三 平安時代の仏教と寺院政策
おわりに
3 九州地方の仏教と寺院政策 ◉齋部麻矢
はじめに
一 辺境としての九州
二 九州の仏教寺院
三 辺境九州への寺院政策
おわりに
4 八世紀初頭における疫病流行と北方辺境地域—和銅元年陸奥国戸口損益帳の分析から— ◉田中禎昭
はじめに
一 和銅元年陸奥国戸口損益帳にみる人口動態
二 戸口の変動とその背景—八世紀初頭における飢饉と疫病—
三 東アジア世界における八世紀初頭の疫病流行
四 北方辺境の疫病と流民・交易の問題
おわりに
〔コラム〕陸奥・出羽の蕨手刀 ◉黒済和彦
Ⅳ 遺構事例
1 栃木県大田原市小松原遺跡—附 石田遺跡、佐良土上の原Ⅱ遺跡— ◉上野修一
はじめに
一 小松原遺跡
二 石田遺跡
三 佐良土上の原Ⅱ遺跡
2 滋賀県栗東市高野遺跡の調査 ◉福井知樹
一 遺跡の概要
二 近江の古代東海道
三 検出した古代東海道遺構
3 大和国横大路 ◉山田隆文
はじめに
一 検出された遺構について
二 考 察
まとめ
4 紀和国境付近の南海道駅路 ◉大岡康之
はじめに
一 紀伊の南海道
二 隅田条里遺構と南海道駅路
三 南海道駅路痕跡の発見
四 もう一つの痕跡—駅家跡?—
おわりに
Ⅴ 付録地図
東北地方の旧国郡名
九州地方の旧国郡名
東日本の駅家と駅路(中村太一氏作成)
西日本の駅家と駅路(中村太一氏作成)
畿内の駅家と主要交通路(中村太一氏作成)
あとがき ◉十川陽一
執筆者紹介
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